デジタル時代の雇用契約書の作成術

1.はじめに

雇用契約書は、従業員との円滑な労働関係を築く上で欠かせない要素であり、法的リスク回避にも貢献します。
本記事では、雇用契約書の作成と注意点について解説します。また、デジタル時代においては紙の文書だけではなく、電子契約などの新たな方法もありますので、デジタル時代に求められる雇用契約書の作成術を解説いたします。

2. 雇用契約書とは?中小企業経営者が知っておくべき基本

雇用契約書とは、企業と従業員との間で、労働契約の内容を明確にするために締結される書面です。具体的には、「勤務場所」「業務内容」「勤務時間」「給与」「休日」などの条件が記載されています。

雇用契約書は法律上では、書面での交付は義務づけられていません。そのため口頭でも契約できますが、口頭で伝えたことによって、のちのち「言った、言わない」のトラブルになりかねません。そうならないためにも、きちんと書面にして2枚作成し、双方が署名または記名押印をしたものを、お互いで1枚ずつ保管しておくことが良いでしょう。

法的にも「できる限り書面により確認する」ことが求められています。

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3. 雇用契約書の必須要素とオプション:どんな内容を盛り込むべきか?

労働基準法第15条第1項により、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないとされています。

この労働条件の明示は、「書面」でしなければならないので、必ず明示しなければならない事項を雇用契約書に記載することをおすすめします。そのようにすれば、雇用契約書の提示とともに労働条件の明示も兼ねてできるので、手間を省くことができます。

必ず明示しなければならない労働条件が記載された労働条件通知書のひな形が厚生労働省ホームページに掲載されています。そのひな形を基に「雇用契約書 兼 労働条件通知書」を作成すれば、漏れがないようにすることが出来ます。

一方で、企業が求める特定の条件や福利厚生、秘密保持契約などはオプションとして検討しましょう。適切な要素を含めることで、双方にとって公平な契約を形成することができます。

4. デジタル時代の効率的な契約書作成と保管

デジタル時代において、契約書の作成と保管は、クラウドベースの契約書作成ツールやデジタル署名サービスを活用することで、より効率的に行うことができます。

例えば、「クラウドサイン」や「電子印鑑GMOサイン」などのサービスを利用することで、ペーパーレスでスピーディーな契約書作成が可能です。これらのサービスは、契約書の作成から管理までをワンストップで行えるクラウド型の電子契約サービスです。また、電子データの保管により、必要な情報にアクセスしやすくなります。

これらのサービスを活用することで、契約書作成と保管がより効率的かつ簡単に行えるようになります。

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5.電子契約サービスを活用した「雇用契約書 兼 労働条件通知書」の交付の流れ

  1. ワードやエクセル等で「雇用契約書 兼 労働条件通知書」を作成し、PDFに変換する。
  2. PDF化した「雇用契約書 兼 労働条件通知書」を電子契約サービスにアップロードする。
  3. アップロードした「雇用契約書 兼 労働条件通知書」に、従業員が電子的に署名をするための押印欄をセットする。
  4. 電子契約サービス上で従業員のメールアドレス宛に「雇用契約書 兼 労働条件通知書」を送信する。
  5. 従業員が電子署名をすると電子署名済の「雇用契約書 兼 労働条件通知書」が電子契約サービス内に保存される。

おおまかな流れとしては上記のようになります。

電子契約サービスを用いて従業員が電子署名をする場合、電子証明書を用意する必要はありません。従業員本人のものであると確認がとれているメールアドレス宛に電子契約サービスを経由して「雇用契約書 兼 労働条件通知書」を送信すれば、電子契約サービス内の仕組みによって、従業員は法的に有効な電子署名を行うことができます。そのため、電子契約サービスは導入しやすいと思います。

実際に私は新規の顧問先との顧問契約をする際にクラウドサインを利用しています。お客様に電子署名を求めなくても契約が出来るので、便利だと思います。

しかし、デメリットとしては、電子契約サービスを利用する費用がかかります。発生するコストと削減できる労力を比較検討する必要があります。

6.電子的交付に係る同意を得るために大切なポイント

「雇用契約書 兼 労働条件通知書」を電子的に交付する際に重要なポイントとして、従業員の同意を得る必要があります。

実務上の対応策としては、内定通知書の発行時に、内定者から返送を受ける承諾書に「雇用契約書兼労働条件通知書を電子的な方法で受け取ることに同意する」という文言を追加することで、内定の承諾と同時に同意を得る方法が効果的です。

このようにすることで、円滑な手続きを実現できるようになります。

7.まとめ

デジタル時代における雇用契約書の作成は、中小企業の経営者にとって紙から電子契約が主流となる可能性があります。

労働環境の変化や法制度の進化に対応し、従業員との間に明確な契約を築くことは、労働トラブルを未然に防ぐために不可欠です。経営者の方々はこれらの専門的な知識を基に、企業に適した雇用契約書を作成し、労働トラブルを予防しましょう。

デジタル時代の進化に適応し、スムーズな契約プロセスを確立することで、従業員との信頼関係を構築し、企業の持続的な成長をサポートしていくことが重要です。


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投稿者プロフィール

石田厳志
石田厳志
木戸社会保険労務士事務所の三代目の石田厳志と申します。当事務所は、私の祖父の初代所長木戸琢磨が昭和44年に開業し、長年に渡って企業の発展と、そしてそこで働く従業員の方々の福祉の向上を目指し、多くの皆様に支えられて社会保険労務士業を行ってまいりました。
当事務所は『労働保険・社会保険の手続』『給与計算』『就業規則の作成・労働トラブルの相談』『役所の調査への対応』『障害年金の請求』等を主たる業務としており、経営者の困り事を解決するために、日々尽力しています。経営者の方々の身近で頼れる相談相手をモットーに、きめ細かくお客様目線で真摯に対応させていただきます。