労働基準監督署の調査について

事業主にとって税務署や労働基準監督署というのは他の役所に比べて怖いイメージがあるようです。ちなみに税務署であれば税金の調査と思い浮かべることができますが、労働基準監督署の調査の場合「何を調べるの?」という方が多いのではないでしょうか。

今回はそのような方のために「労働基準監督署の調査」について説明いたします。

労働基準監督署、労働基準監督官とは

労働基準監督署とは、労働基準法や安全衛生法などの労働者保護法規を事業主に守らせることを主たる業務とする厚生労働省の出先機関です。

労働基準監督官とは、労働基準関係法令の権限に基づき事業場に立ち入り、遵法状況を調査し、使用者に行政指導を行うほか、行政処分、労働者災害補償保険事業に関する業務をしている国家公務員です。また、労基法・安衛法などの法律違反の罪について会社を強制捜査したり、事業主を逮捕したりする権限を有している特別司法警察職員でもあります。

労働基準監督署の調査とは

労働基準監督署で行われる調査には ①定期監督 ②災害調査 ③災害時監督 ④申告監督 ⑤再監督という5種類があります。以下、それぞれについて説明します。

労働基準監督署の調査の種類

①定期監督

監督署がその年度の監督計画にしたがって法令の全般にわたり事業主に対して行う監督

②災害調査

死亡災害や重大災害について、同種災害防止のため災害を構成した起因物の不安全な状態や行動を発見して、これらの是正方法を決定するために行うもの

③災害時監督

一定程度以上の労働災害が発生した際に実施される臨検監督

④申告監督

労働者から法令違反等の申告が労働基準監督署にあったときに行われる監督

⑤再監督

定期監督、申告監督、災害時監督の結果発見された(是正勧告した)違反が是正されたかどうかを確認するために行われる監督

労働基準監督署の調査について

今回は同様の調査方法である①定期監督④申告監督について説明します。

一般的な労働基準監督署の調査は会社に来署通知の郵便物が届くことから始まります。山口労働基準監督署の管轄内では最低賃金の履行に関する監督を兼ねて1月下旬から2月中旬に行われることが多いです。当社の顧問先から連絡が多いのはこの時期です。

調査時に持参する書類

下記は令和3年の2月にあった調査の時に持参するように指示があった書類です。

①調査票
②就業規則(賃金制度等の別規程を含む)
③給料明細書・賃金台帳等の賃金を記録したもの
④出勤簿・タイムカード・日報等の始業・終業時刻及び労働時間を記録したもの
⑤時間外・休日労働に関する協定届
⑥労使協定書または協定届(変形労働時間制、賃金控除等)
⑦労働者名簿
⑧労働条件通知書、労働契約書等の労働契約締結に関する書類

①の調査票は案内文書に添付されている書類で、労働者数や始業・終業時刻等を記入する書類です。事前に記入し、調査の時に持参するように指示されます。
賃金台帳や出勤簿は直近3ヶ月分の場合が多いです。
調査の目的等によって持参するように指示される書類は変わりますので、案内文をよく確認してください。ただし「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」はどの調査でも必ず必要となります。

調査のやり方について

山口労働基準監督署の場合、受付に行くと別室に案内されます。監督官と向かい合って座り調査が始まります。
流れとしては

①会社の概況、勤務状況等の把握、確認
②労働関係帳簿によるチェック
③事業主への聴き取り、確認
④問題点があれば、是正勧告書、指導票の交付

となります。大体1時間から2時間くらいかかる場合が多いです。

指摘を受けることが多い事項

①賃金台帳に労働時間数、時間外労働時間数を記載していないこと
勤怠項目を設けていない賃金台帳を利用されている会社の場合、指摘を受けます。

②残業代の単価の算出方法について
残業代の不足額がある場合は、調査の対象期間分の不足額を遡及して支払わなければならなくなります。

③労働日ごとの始業・終業時刻を適正に記録しているかどうか
出勤簿が押印だけだと指摘を受けます。

④有給休暇を年間で5日以上取得させているかどうか
2019年4月1日から始まった制度です

⑤労働者に定期健康診断を受けさせているかどうか
1年以内ごとに1回定期的に健康診断を受診させなければなりません

是正勧告・指導票が出た場合の会社の対応方法

是正勧告書は、労働基準監督官が調査をして労基法等の法令違反を認めたときに交付される文書です。それに対して指導票は、労基法等に直接違反違反するものではないが改善する必要がある場合に交付される文書です。
会社に対して是正勧告書や指導票が交付された場合には、事業主はすみやかに指摘事項を改善する必要があります。そして指定期日までに労働基準監督署へ是正報告書を提出しなければなりません。

まとめ

以上が労働基準監督署の調査についての説明になります。

是正勧告書や指導票が出された場合、労基法等の知識がなければ対応が難しいと思います。どのように改善すればよいか分からない場合、労働基準監督官に質問するのが一番良い方法です。しかしながら、監督官は改善方法を教えてくれますが、書類の作成や就業規則の作成まではしてくれません。

ご自身で作成できない場合や不安がある場合には、木戸社会保険労務士事務所にご相談ください。


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投稿者プロフィール

石田厳志
石田厳志
木戸社会保険労務士事務所の三代目の石田厳志と申します。当事務所は、私の祖父の初代所長木戸琢磨が昭和44年に開業し、長年に渡って企業の発展と、そしてそこで働く従業員の方々の福祉の向上を目指し、多くの皆様に支えられて社会保険労務士業を行ってまいりました。
当事務所は『労働保険・社会保険の手続』『給与計算』『就業規則の作成・労働トラブルの相談』『役所の調査への対応』『障害年金の請求』等を主たる業務としており、経営者の困り事を解決するために、日々尽力しています。経営者の方々の身近で頼れる相談相手をモットーに、きめ細かくお客様目線で真摯に対応させていただきます。