経営者が知っておくべき最低賃金についての解説

1.はじめに

山口県の最低賃金は、令和4年10月13日から888円になります。
現在の857円から31円引き上げされ、過去3番目の引き上げ幅となっています。10年前の2012年は690円だったので、この10年で198円も上がりました。
今回は、近年引き上げ幅が大きい最低賃金について解説していきます。

2.最低賃金とは

賃金の最低基準については、最低賃金法で定められています。
原則として、正社員、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託、学生などにかかわらず、すべての労働者に適用されます。

労働契約などで最低賃金に満たない賃金で合意したとしても無効となります。ただし、契約そのものが無効になるのではなく、最低賃金に満たない部分のみが無効となります。例えば、700円で契約をしたとしても888円で契約したものとして取り扱われます。

最低賃金以上の賃金を支払わないと最低賃金法違反となります。

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3.最低賃金の種類

最低賃金には ①地域別に定められるもの(地域別最低賃金)②一定の事業や職業について定められるもの(特定最低賃金)の2種類があります。

①地域別最低賃金は、各都道府県ごとに決定され、その都道府県内のすべての労働者と事業主に適用されます。よくニュース等で取り上げられる最低賃金は、こちらになります。

②特定最低賃金は、ほとんどが「〇〇県〇〇業最低賃金」の名称で、その都道府県内の一定の事業や職業に従事する労働者と事業主に適用されます。(例:〇〇県各種商品小売業最低賃金など)

地域別最低賃金と特定最低賃金の両方の適用を受ける労働者については、そのうちの最低賃金額が高いものが適用されます。
派遣労働者については、派遣元でなく派遣「先」の最低賃金が適用されます。そのため、派遣労働者または派遣元の事業主は、派遣先の事業場に適用される最低賃金額を把握しておく必要があります。

4.最低賃金の対象となる賃金

最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。
一般的には、毎月の賃金のうち、基本給と諸手当(下記の賃金・手当を除く)が該当します。

最低賃金の対象から除くもの

  1. 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  2. 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  3. 割増賃金(時間外手当・休日出勤手当・深夜勤務手当)
  4. 精皆勤手当
  5. 通勤手当
  6. 家族手当

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5.最低賃金額以上かどうかを確認する方法

支払われる賃金が最低賃金額以上となっているかどうかを調べるためには、最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を下記の方法で比較します。
支払われている賃金が日給、月給制などの場合は、対象となる賃金額を時給額に換算して最低賃金と比較します。

①時間給の場合

時間給≧最低賃金額(時間額)

②日給の場合

日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

※日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、換算せずに比較しても大丈夫です。

③月給制の場合

月給÷1か月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

④出来高払い制その他の請負制によって定められた賃金の場合

出来高払い制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払い制その他の請負制によって労働した総労働時間数で割り時間当たりの金額(α円)に換算する。

α円≧最低賃金額(時間額)

⑤上記①から④の組み合わせの場合

例えば、基本給が日給制で、各手当(職務手当など)が月給制のなどの場合には、それぞれ上記②③の式により時間額に換算し、それを合計した金額(β円)を算出する。

β円≧最低賃金額(時間額)

【具体例】
労働者Aさん

1日の所定労働時間が8時間で年間の所定労働日数が260日
月給制 150,000円の場合

8時間×260日÷12か月=173.33時間 ← 1か月平均所定労働時間
150,000円÷173.33時間=865円

よって 865円<888円

この場合は最低賃金法違反となります。

6.最低賃金の例外

一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に、最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれなどがあります。そのため、以下の1から5の労働者については、事業主が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額の特例が認められています。

  1. 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
  2. 試の使用期間中の方
  3. 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
  4. 軽易な業務に従事する方
  5. 断続的労働に従事する方

なお、最低賃金の減額の特例許可を受けようとする事業主は、最低賃金の減額の特例許可申請書(所定様式)2通を作成し、所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出する必要があります。

7.最低賃金法に違反した場合

地域別最低賃金の額以上の賃金を支払わないと、 50万円以下の罰金の対象となります(最賃法40条)。

また、労働者は、 会社の最賃法令違反の事実を、 労働局や監督署へ申告することができます。 事業主は、申告した労働者に対して、解雇などの不利益な取り扱いをすることはできません(最賃法34条)。

特定最低賃金が適用される場合に、その額に満たない賃金(地域別最低賃金以上のものに限ります。)しか支払われていない場合は、 最賃法上の罰則の対象にはなりませんが、 賃金の一部の不払いとして労基法24条1項(全額払いの原則)の違反となり、 同法上の罰則が適用されます(30万円以下の罰金)。

違反した場合は、上記のような罰則を受けることになります。しかし、実態としてはいきなり罰則を受ける訳ではありません。

まず、労働基準監督署から不足額を支払うように言われます。その際、素直に不足額を支払えば、上記のような罰則を受けることはありませんので、ご安心ください。

7.まとめ

以上、最低賃金について解説しました。

山口労働基準監督署は、毎年1月下旬から2月中旬頃に労務管理状況等の調査を行っています。その調査の際に最低賃金もチェックしています。最低賃金額が上がっていますので、今一度、労働者の賃金額をお確かめ下さい。

不安な方は、木戸社会保険労務士事務所までご相談ください。


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投稿者プロフィール

石田厳志
石田厳志
木戸社会保険労務士事務所の三代目の石田厳志と申します。当事務所は、私の祖父の初代所長木戸琢磨が昭和44年に開業し、長年に渡って企業の発展と、そしてそこで働く従業員の方々の福祉の向上を目指し、多くの皆様に支えられて社会保険労務士業を行ってまいりました。
当事務所は『労働保険・社会保険の手続』『給与計算』『就業規則の作成・労働トラブルの相談』『役所の調査への対応』『障害年金の請求』等を主たる業務としており、経営者の困り事を解決するために、日々尽力しています。経営者の方々の身近で頼れる相談相手をモットーに、きめ細かくお客様目線で真摯に対応させていただきます。